「ロコ!思うままに」大槻ケンヂ

今回は大槻ケンヂのこれ。大槻ケンヂほど知名度とCDの売り上げが一致しない人も珍しいと思うんですが、まあ奴の詩はほんと凄いし、話も面白いです。文体に変わったとこはない、というより色んな人から影響受けてんだろうなって感じの文体ですが、アイデアがとにかくずばぬけていて、もうそれだけで楽しいです。彼の「くるぐる使い」は星雲賞という日本SFの賞を取ってますが、たしかに凄く面白かった。でも気持ち悪いです。筒井康隆っぽいかんじ。


大槻氏はかなり、信者というか尊敬してるファンが多いし、かくいう私も信者とはいかないまでもかなり好きなので、少し褒めすぎちゃうかもしれませんのでその辺は差し引いてください。


これ、久々のオリジナル短編集です。エッセイはかいていましたが小説は久々な気がします。

タイトル作は新興宗教の教祖(つーのかな、自分をイエス様という電波なかた)の父親を持ち、監禁されて育った少年が、ある日美しい少女に出会い恋に落ち、ああ外の世界はおっかないっていわれてたけどあんな子がいるんだあ広い世界にでていこうかなあでもおっかないなあ、と悩みつつ、外の世界に足を踏み出す物語。

いい話なんだけどちょっとベタすぎるかもしれません。女の子とこんなうまくいくかよ、とかいう男性諸君の声が聞こえてきそうであります。世界観は確かに凄く面白いけど。


でも個人的にはこれより、妻と子を亡くして頭のねじがはずれかけた中年男が、ゲーセンのUFOキャッチャーでくまのぬいぐるみをゲット、しかもこれがしゃべるので(なのか、男の頭がおかしくなってるのかは謎なんですが)それとともに旅をしたり、一緒に寝たり、傍目にキモいとしかいえないことをしていくうち、魂がすくわれていく

「モモの愛が綿いっぱい」のほうが好きです。

しかも最後にSF読者がドキンとくるようなモヤモヤしたオチもついていて楽しいし、30男に萌えるやら泣けるやら、大変なことになります。

中年男性、もといお父さんが好きな人は是非。


この2つは結構いい話なんですがはきけさえこみ上げるひっどい話も結構あります。

特に女子学生のいじめ+殺しをかく「キテーちゃん」は、オカルト要素が少なく、実際ありえそうな気持ち悪い話。怖いの嫌いな人には本気でお勧めできませんし、そういうの慣れてる人にもオカルトがないだけほんとにイヤです。私はこれ、凄い惹かれた話でもあったのですがもう、気持ち悪くて悪くて。読後感の悪さはかなりのもんです。

あと「ドクター・マーチン・レッドブーツ」もヤバいです。これも若いときにやってしまうシャレになんない過ちなんですが、オチは不思議とオカルトめいていて、何かモヤモヤと心に残ります。


他にもなんかジョンレノンが現れたり、少年探偵団シリーズにオマージュを捧げた作品があったり。あんまり筋教えるとネタバレになりまくるんでこのへんまでしか話せないんですが、とにかくその奇想と、しつっこいぐらいの性描写や暴力描写はほんと、目を見張ります。

検索してもあんまりでないくらい作家大槻ケンヂは知られて無いようですが、本当に面白い作家だと思いますよ…でも手放しに「よんでも後悔しないよ!」とはいえません、そこが魅力でもあるんですが…でもクオリティは高いので、そういうのが大丈夫だとかむしろ暗くなるの大好きだよとか、そういう人は満足できると思います。あと、装丁がとても綺麗でイメージに合っています。好きです。


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