何となくゲイの小説についてもかきたいな、と思ったのでかきます。最近フランシス・キングの「鬼畜」もよんでこっちもなかなかよかったんだけど、これはなんか、ゲイ小説って言う枠でくくるような作品じゃないような気がしたんですよ。なのでアレナスを紹介したいと思います。
あと感想いただきました。すごい嬉しいです。
>チンカーさん
ラムサイトから有難うございます。最近どっちもマンガの更新がスカスカですが、長い目で見てやって欲しいと思います。そして本好きそうな方からの感想がとても嬉しかったり。
私もアーヴィングは「ウォーター・メソッドマン」以外未読です。ガープの世界と、あとサイダー・ハウス・ルールもこの人じゃなかったでしたっけ。ちょっと興味がでて、読もうかなという気がしてます。
あとスタさんに興味を持っていただけて嬉しいです。すっげー好きなんですよ。読んだときからもう、ズキーンというかんじで。
全集みたいのがでてないので、集めるのも結構大変なのですが、ハマる人には絶対ハマると思います。ブラッドベリが好きな人ならすきかもしれませんね。でもクセもあるので、ちょっとドキドキです。ハマらなくても怒らないでくださいw
さて、今回はレイナルド・アレナスの「夜になるまえに」。これは作者の自伝的小説です。彼はキューバの出身。バチスタ政権下で生まれました。その後革命に自身も参加し、カストロ政権になってから、彼の受難が始まるわけなんです。
でもあまり政治的小説とか、政治批判というわけではなく、彼の人生、ゲイとしての性体験が描かれていきます。だから、凄く個人的。例えば10年はあった部分が、数ページですまされていたりします。章仕立てで一章がとても短く、一度通しで読んだ後はパラパラ適当にめくった部分を読むのでも楽しめます。
土を口にしていた少年時代に描かれる描写は、壮大で、自然に対する惧れや神聖な思いと、思い出に満ちています。青年期になると、知り合いになった作家や、自分が文章を書き始めたきっかけ、そして政府に目をつけられ追い回され、最後はエイズで死に至ります。
さてと、彼、かなりの苦労人です。そもそもがゲイな上に、反共産思想の持ち主で、しかも作家。禁止されても禁止されても、誰かの目にとまることを信じて原稿を外国に送り出す姿には感動すら覚えます。そもそもこの人、とってもタフネスで自伝の中でも弱音なんて殆どはかず、小説まんまな数奇な人生を歩んでいても、後ろも振り返らず、自分が間違っているんじゃという疑念すらも感じられません。
裏切り者の作家には容赦なくバッシングを浴びせ(実際にいたらしいんですよ、ちくり屋ってやつ)、逆に生涯の親友には賛辞を惜しまず心の友とできる。どんなにカストロを憎んでいても彼はキューバが好きで、亡命したのもかなりギリギリでした。
亡命した後の文章はどこか寂しく、キューバで逃げ回ったときより覇気が無いような気もします。気にしすぎかもしれませんけども…
冒頭に引用されている(巻末だったかもしれません…ほんとに私の記憶力ってry)「はじめに/おわりに」という文章は、エイズで命がいくばくも無い彼が書いた序文です。そこには自ら命を絶つこと、自分にはもう戦えないこと、だがキューバの若者はまだ戦うことが出来る。自由になれ、僕はもう自由だ、といったことが書かれています。彼の強い思いに、ぐっと涙がこみ上げてきます。
こういうとどうも暗そうだな、と思う人もいるかもしれませんが、そんなことはありません。
本作で顕著なのは作者の素晴らしいユーモア。例えば「ホモの4つのカテゴリー」(だったかな?今手元にありませんので…)という章では、ゲイが首輪ホモとか色々分けられてかかれてるんですが、これがおかしいのなんの。あとはアレナスの友人で優れた作家でもあるビルヒリオが、黒人コックが料理してる間にケツほられるのがすきとか、そういう面白い話が一杯なんですよ。
彼本人も言ってますが、独裁という絶望的な状況ではユーモアが一番大事なんでしょうね。本当に、これを無くすと無味乾燥な人間になってしまうんでしょう。
本当に面白く、冒険ものを読んでいるように胸が弾み、なおかつ主人公(つまり作家)の勇ましさにしびれ、ぐっと感情移入して苦しさを覚えさえする。そんな物語小説のような魅力を備えた自伝小説です。反共産っぽいところもあるので、セリーヌ好きもハマるかも。
わたくし、恥ずかしながらこれ読む前は独裁もモノによるだろと思ってたんですよ。カストロがあんな方向性に走ったのも、国があんな状況なら仕方ないんじゃないかとかね。でも独裁は独裁なんですよやっぱ。国は民が作んなくちゃいけません。そういやカストロまた生き延びやがったんだなあしぶといジジイめ。
とにかく是非一読してください。絶対何か残るものがあるし、貴重な読書体験ができると思います。図書館でかりて読むとかじゃ勿体無いぐらいですよ、これ。
あとなんか元気がでるんですよ。不思議だけど。こんな苦労してるヤツがいるんだからがんばらなくちゃなあという考えなのかもしれないし、ただ純粋に感動するのかもしれませんが、これと映画『ヘドウィグ・アンド・アングリー・インチ』があれば元気100倍です。メーター振り切れます。
ちなみに映画にもなってて、アレナスを演じてる俳優さんちょっとティルみたいだなあとか(ラムシュタインのです…知らない人はメンゴ)思ってたら、実際見てみたら全然かっこよかった。
映画自体もなかなかなできですよ、原作ファンからしたら全然物足りないけど…まあ印象に残ったセリフは「この扁平尻!」でした。すごいよね扁平尻って侮辱。
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