スタージョンについてちょっと

自分がなに読んだか覚えておくためだけの書評、というつもりではじめたのですが、まあたまには作者のことを書いてもいいかと。でスタージョン。すげえ好きな作家です。愛してる。


SF作家として知られていますが、ミステリーの範疇にはいる…のかな?という作品も多数かいています。特徴として、文章がうまい(私も原文は読んでませんが)、そして頭のねじが2,3本とんでそう、ってことですか。


何しろブルドーザーが人を襲うものから、性別の区別ない人間が生きる星、当時珍しかったホモをテーマにしたもの等、とにかく節操無く設定から人物まで奇想を練りこみまくる。

しかも凄いピュアな人なのか、前述した性別の区別の無い星は、ここまでやったら気持ち悪いだろ、てくらい極端な男女平等なのですが、驚いたことに彼はそれを何のアイロニーでもなく、「これって理想郷じゃん?」て感じで、当然のごとくかいておられるのであります。

ホモの話にしても、なんら社会問題やらを持ち出すことなく、純粋な愛の物語としてかかれているために、どうにも違和感がありさながらそういう趣味の女の人がマンガなんかでかいているアレやソレみたいです。

極端な話をすると、すごい共産思想なんですね彼は。極端すぎ。ついていけない。


でも彼が書く話がどことなく悲しいな、と思うのは、社会のはみ出し者が出てくることが多いから。どこと無く違和感を感じて打ち解けることの出来ない人達。そしてそういう人たちの行き着く先は、どうしても明るい未来ではありえないことが多いんです、彼の小説の場合。しかもそれを、おかしみ交えたちょっと狂った設定でかくもんだから、なおさら悲しく感じてしまう。しかも何故か大抵、キモメン。その設定はいるんだろうか、と思うこともしばしばですが。ただでさえ精神的不具の方達なのだからそんなハンディはもういらないっての。


ご本人の話をちょっとさせていただくと、パーティ会場で人目もはばからずバク転したとか(何があったんだよ?宇宙人に襲われたのか?)、若い頃彼どうしようかと思うぐらい美男子だったよお(意訳)とかの有名なSF作家ハインライン氏に言われたりとか、あと作家として成功しかけてたのに突然ホテルを買ってビジネス始めちゃったり(女に作家やってよあんた、て言われてまた書き出したとかな)、自分で「これ、俺の最高傑作かも、すごくね?」とかいってた作品が読んでみたらスゲーつまんなかったり(私見ですが。ちなみに「ここに、そしてイーゼルに」てやつです)、本人も結構突っ込みどころ満載な感じです。キモメンの話とか、はみ出し者の話とか書いてるのにご本人はイケメンで世渡り上手な感じなんですね。畜生が。


ええっと、彼の作品はまとめた全集とかも無いので根性で集めてください。前紹介した輝く断片は河出のハードカバーですが、もう一個同じ奇想コレクションで「不思議のひと触れ」。こちらは少しSF要素もあり、なによりファンタジー要素が強いのでそういうのが好きな方にもオススメ。はっとするほど孤独の描写が美しいです。

あと『海を失った男』こちら晶文社のハードカバー。「墓読み」が大好きです。これもファンタジー色強し(こうしてみるとコイツSF少なすぎね?)。これは全体的に奇想作家としての色合いが強いかな。ホラーっぽいのもありますよ。ここまで日本オリジナル短編集。

あと最近復刊した「一角獣・多角獣」ってのがありますが、私読んでません…アメリカででた短編集のそのまんま日本語訳なんですが。収録作の殆どが他の本で読める上に、何作かがページ数(ソレと多分、内容だろうなあ…上のホモの話はこれにはいってました)の関係で省かれてます…。


あと単行本。『時間のかかる彫刻』(上で話した「ここに、そしてイーゼルに」収録。スタージョンの自慢げな顔を想像しながら読むとムカムカするのでお勧め。でも他の作品はいいよ)、中編の『夢見る宝石』『きみの血を』(←ヴァンパイアもの。未読)あたり。

ホモセクシャルがテーマの「たとえ世界を失っても」(またクサいタイトルだよね…)は、河出文庫20世紀SF2、1950年代、初めの終わりというアンソロに入っております。ちょっとあまったるい感じもするけど、凄くいい話です、これ。

長編は国書刊行会の『ヴィーナス・プラスX』。例の性別の無い世界ってわけですが、面白いんだけど、これから入るのはあまりお勧めしないかもしれません。



とにかく、知ってると人生で凄い得をした気分になるので(一粒でミステリ・ホラー・ファンタジー・SFとおいしいし)なかなかいい作家さんです。是非お勧めをします。


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