今回は久々に作家について話してみようと思います。てかカテゴリ作ったのにスタさんしかないじゃないかこのカテゴリ。
夢野久作といえば、何となく最近が旬の人、という気がします。というのは何故だかわかりませんが数年前から彼の名前が一般にも知られるようになってきて、今まで怪奇文学といえば江戸川乱歩か横溝正史かって感じだったのがこの人の名前も付け加えられるようになったような気がするからです。なんでだろ?なにかあったのかな?
彼といえばドグラ・マグラですが、私としては短編を読むことを切に勧めます。『斜坑』や『卵』なんかがお勧めです。何故ドグラマグラを勧めないかというと長いんですよ、これ。兎に角長い。通しで読めばそのよさもわかるのですが、最初に読むにしては長すぎるし、その大半が小説の中に出てくる文書、というわけであまり勧められません。面白いんですけどね。チャカポコチャカポコ。
個人的に長編はどうもぐだぐだになりやすい人の印象があり(多分独特のアクの強い文体に途中で飽きがきちゃうんだと思う)短編が好きです。
彼を一言で言えば狂気の作家、だと思います。ものすごく私見だし、御子孫もお怒りになられるのかもしれませんが、彼は小説を書かなかったら殺人鬼になっていたんじゃないのか、とも思うのです。
何故そう思うのかというと、彼の書く文章そのものがかなり『病んだ』印象を与えるからです。
所謂『病んだ』小説を書く人は沢山います。さっきあげた乱歩もそれだと思います(正史はよんだことないの)。でもちがうんだよなあ。乱歩の病んでる加減は狙って描いてるって感じがするんですよ、その奇抜さや、グロテスクさで人を驚かせてやろうというような。久作は何か違う。乱歩が剃刀でしゅっと切った傷口ならば、久作の文章は何かで潰して膿んじゃったというような、何かぐちゃぐちゃした暗さ、みたいなものが確かに漂っている。
まずはその独特の文体。カタカナを多用した文体はなにかしら人をぞっとさせるようなところがあり、また笑い声(アハアハアハ)や擬音(ダルダルと飲み込んでしまった)の表現がもうほんと独特で、もうこれはQさんじゃなきゃかけないです。
これって笑えるんですよね。笑えるんだけど、薄くあげた唇のはじで笑いがこびりついてしまう。何だかぞっとするんですよ。おかしいのに。
そしてこれは本当に色んな小説を読むたびに感じることなのですが、久作の場合特に顕著に、この人にしかかけない雰囲気、言葉で言い表すことの出来ない何かが作品に漂っています。
例えば私が大好きな彼の作品、『斜坑』は炭鉱が舞台なのですが、オープニングから「ホォーーー…トケェ―――…サマァァ―ー」と始まります。コレは坑内で死んだ人が魂を残さないように、死人に場所をいいきかせながら死体を運んでいく、という場面です。
これに代表されるように、全編不吉な匂い、またなんといいますか、田舎らしい野蛮な人の性質(これは差別的かもしれませんが、実際田舎を舞台にしたホラーとかって多いよね…)がまさしく行間の間に読み取れるんですよ。この雰囲気作りが本当に凄くて、彼の作品を2,3篇も読むと、もう暫くあの空気から逃れられないほどです。なんだろう、この才能というか、この自身が持っている病んだものに嫉妬さえしてしまうのですが、どうしたら本当にこういう空気まで書けるんだろうなあ。兎に角素晴らしい。
あと後味の悪さも特徴の一つで、毎回毎回救われなかったりぼやぼやして終わってしまい、頭の中にいつまでもその場面だけが煙のように渦巻いていたりする。
少し調べてみたら実際少し複雑な環境の人だったようで、やっぱり少し変わった感性の人だったんだろうな。まあこれは控えめな言い方だけど要するにキ印なんですよ彼の小説(ああいっちゃった)。
もし読んだことないって人がいたら是非お勧めしたいです。軽くショックぐらいはうけると思います。ただこれを受け入れるかどうかは別問題ですが(笑)。
お勧めは『斜坑』『いなか、の、じけん』『空を飛ぶパラソル』あたり。とくにいなかの~はまさしくQさんの代表作。私はハードカバーでもってますが文庫でも全集でてるみたいです。
あ、あとこの人とか他の日本怪奇小説に代表されることですが、今から見ると差別とも受け取れる言葉は多いです。キチガイとかシナですね。まあそれがまた雰囲気あっていいんだけど、その辺駄目な人もいるかもしれないんで一応。
どうでもいいのですがこの人とラブクラフトだけは写真見たときショックを受けました。夢野アゴ作…アゴクラフト…とか呟いてませんよ!断じて!
そういや2ちゃんのアゴ…ラブクラフトスレは大好きなんですが、あんな感じでQちゃんスレもできないでしょうか。Q語で語りたいです。
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