「ナイフ投げ師」スティーブン・ミルハウザー

ミルハウザーの「ナイフ投げ師」。これ、凄く評価が高いみたいで色んな所で紹介されています。
翻訳者も柴田さん。この人の本ならまず間違いない、という翻訳者さんです。

短編集なのですが、かなり変り種です。どこがかわっているかというと、設定そのものもそうですが、それを自然と容認している空気がとても不思議です。
どんなことかというと、古い友達が結婚したと聞いていってみると、相手はデカいカエルだった、という話があります。普通だったらこの出来事そのものが驚くべきことで、それだけで友達を問い詰めたり、その場から逃げたくなったりすると思うのですが、主人公は割とあっさりコレを受け止めてしまうんですね。
そして友達の変わり者ぶりに呆れながらも、カエルとの情事を想像して不思議な気持ちになったり、彼女の美しさを発見したりして、最後は一人寂しくまた帰って行きます。昔の友の変化を見たときの哀愁と、ちょっと気の抜けたユーモアがあって面白い話です。

他にも、遊園地の開発にこだわるあまり、とんでもない次元まで改造し尽くしてしまう話(個人的にはコレが一番面白かったです)もあり、この遊園地そのものもかなり突拍子もないもの(遊園地に裏街が存在し、娼婦がいたりする)なのですが、これもまた、淡々と語られています。
変人、変なものをあっさり容認してしまうこの懐の広さが、全編を貫いていて、少々恐ろしい話でもあるにも関わらず、どこか間が抜けて映ります。

それと色んな批評家や柴田さんが強調しているように、語りの凄さが素晴らしい。精密な描写が延々と続きます。それ故に、少々純文学を読んでるような気持ちになってしまって、続けて読むとちょっと飽きちゃいました。少しずつ読んでいく方が体力が持っていいかも。読むのに体力が要る本です。

少々変わった設定と、著者の語りの凄さがあいまって、なんとも濃い~作品です。読後感が妙な小説が読みたければ是非どうぞ。ただ感情を揺さぶられるとか、そういう感じの作品ではないです。

関係ありませんがこの間NHKの週間ブックレビューみてたら、コレとジャネット・ウィンターソン、それともう一つ海外文学(タイトル忘れました…あれも気になってるんだけど読んでないなー)を勧めてて、ああ、海外文学ファンのツボはどれも同じだなあとしみじみしました(笑)

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