怪奇探偵小説名作選―5 橘外男『逗子物語』

本レビューとか名乗っといて最近まったくかいてないことに気付きました。かきます。

といっても今回は橘外男。幻想怪奇好きなら絶対知ってるんじゃないかと思われるほど有名な方っぽいのですが私最近まで知りませなんだ。このシリーズはなかなかの品揃えでとりあえず小栗虫太郎買って岡本綺堂とこの人で迷ってたら最近猟奇にハマってることだし、と思ってこちらを購入。

2部構成になってます。最初は西洋が舞台で、後半は日本が舞台のもの。後半は割りと真っ当な日本怪談。特筆すべきはやっぱり前者かなあと思います。
ドキュメンタリータッチの文体でありながら、書かれているものは狼男や人食いゴリラ等荒唐無稽なものばかり。それに妙に詳しいグロ描写やおなじみの金髪美女が合わさり、まあなんとも胡散臭い。この胡散臭さ、どこかで見たなあと思ったら、往年のホラー映画そっくりじゃないですか。今見ると差別的な描写も凄くいい味だしてて、ああたまらないなあという感じ。

このたまらなさを表現するのは、ちょっと難しい感じです。でも江戸川乱歩や横溝正史が好きな人なら、あの胡散臭さとちょっとしたアホらしさがどれぐらい魅力的かっていうのがわかってもらえると思います。橘外男の場合はそれにくわえて、そこまであからさまな内容でありながら品のある文体のおかげで、読み物としても面白いものになってます。


個人的には女豹博士が一番好きかな。色っぽい女医さんもいいし、真意のほどがぼかされた感じのエンディングも、途中の意味のないグロ描写もいい感じ。
あまり怖い作品という印象はないんだけど、後半におさまっている「蒲団」はかなり震えがきました。よくある呪われた物質なんだけど、それが蒲団というのはなかなか斬新だと思ったし正体も不気味だしで夜読むもんじゃねえなと思いました。


基本的に西洋ホラーと同じでスプラッタとトンデモ展開を楽しめる、とっつきにくくてもエンタメの強い作品だと思いました。

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